2023.11.21
2024.12.05
半導体は何がすごいのか
- 文字で構成されています。
※この記事内容は
どうして「半」導体?!
私たちの身の回りの電化製品や電子機器には、ほぼすべての製品に半導体が使われています。
車やATM、医療機器、電車......あげればきりがありません。
半導体がこれほど電子機器に使われているのは、その性質にあります。
電気を通せるかを基準にして物質を区別すると、銅や鉄などの電気を通す「導体」、ガラスやゴムなどの電気を通さない「絶縁体」に分けられ、この中間に半導体が位置します。
「半」導体の名の通り、普段は電気を通さないのに、ある条件下では電気を通す。
この性質が、電化製品を正しく機能させるために必要なのです。
半導体はコンピューターの頭脳
電気を通すか通さないかがはっきりしている導体や絶縁体と違って、半導体は使い勝手が悪いとされていました。しかし、その半導体に光を当てたのは、量子力学です。量子力学がミクロの世界で原子や中性子のふるまいを解き明かしていく過程で、半導体がどういう条件下で電気を流すのかがわかりました。
この仕組みを利用すれば、電気のON/OFFができることになり、回路のスイッチになります。
ONが1、OFFを0とすれば、すべての数字は1と0だけで表せます。このスイッチを高速で切り替えて、回路をつないだり切ったりしながらコンピューターは複雑な計算をしています。
電気の流れを制御するスイッチとしての役割のほかにも、電気を増幅する(アンプ)、電気エネルギーを光に変える(LED、レーザーなど)、逆に光エネルギーを電気に変える(太陽電池)、様々な役割があります。
半導体の役割 | 製品名 |
---|---|
電気エネルギーを光に変える | LED |
プログラムやデータを記憶する | メモリ |
電気の逆流を防いで回路を守る。交流を直流にする | ダイオード |
電気の流れをコントロールする | トランジスタ |
電気信号を増幅する | アンプIC |
真空管から半導体へ コンピューターが手のひらに
半導体の原点は真空管です。真空管は、中を真空にしたガラス管の中に電極をいれて、電流をコントロールするものです。
1940年代にアメリカで開発された「ENIAC(エニアック)」は、真空管を使った当時の最新型コンピューターで、現代のコンピューターの祖先の一つと言われています。
使われた真空管は約18,000本。数万もの部品からなり、重量は約30トンあったそうです。1秒間に5,000回の足し算ができるレベルの計算能力は、それまでに開発されたどの計算機よりもはるかに高性能でした。
しかし現在、我々が手にするスマートフォンは、このENIACの性能をはるかにしのぐ処理能力があります。例えば2023年に発表された米アップル社の最新スマホは、1秒間に約17兆回の演算能力があります。重さは200グラムもありません。半導体は190億個使われているそうです。
真空管はサイズや消費電力が大きいばかりでなく、熱をもって壊れやすいという欠点がありました。しかし、真空管の欠点をクリアする半導体が開発されたことで、半導体が素材であるトランジスタへの置き換えが進みました。
半導体の性能アップのカギは集積化~詰め込んで詰め込んで
半導体の性能はどんどん上がっていきました。それを可能にしたのが「集積化」です。
半導体の集積化とは、同じ面積の基盤の上に半導体(トランジスタ素子)を小さくして(微細化して)詰め込んでいくことです。同じ性能の半導体の数を2倍にすれば処理速度は2倍になります。
また半導体は、切り分けていっても性能が落ちることがありません。それどころか、小さくなった分、電子回路が短くなることで処理速度が上がるのです。
また、ほかにも集積化が進む理由としては、1個当たりの製造コストが下がること、消費電力が下がればエネルギーを節約できます。温室効果ガスの排出も減らせ、SDGsにつながります。
半導体の進歩は微細化加工技術の進化といえます。
しかし、切り分けて(微細化して)いくのにも限界があります。物質は原子より小さくできないからです。また、半導体のサイズをどんどん原子レベルに近づけていくと、それまでは無視できていた配線など半導体以外の要素が処理速度に影響を与えるようになります。
そのため、微細化によって期待する効果が得られにくくなっていきます。
現在は半導体の微細化も限界に近づいています。
そこで期待されているのが、量子コンピューターなのです。
世界中で高まる半導体需要 日本では?
半導体は「産業の米」とも呼ばれます。米とは、幅広い分野で利用されている半導体が、多くの産業を支えて人々の生活に不可欠なもの、という意味で使われています。
そのため半導体不足は我々の生活に直接影響します。半導体不足の影響による新車の納品遅れのニュースは記憶に新しいところです。
半導体の需要は年々高まり、売上高は右肩上がりです。
1988年に日本の半導体産業の売上高は、世界の約50パーセントのシェアがありましたが、アメリカや韓国の台頭により、年々シェアを落としています。
経済産業省は、国内で半導体を製造する企業の売上高を2020年に約5兆円から、2030年には約3倍の15兆円超に引き上げる計画を掲げています。
私たちの生活を支える小さな部品である半導体について、もっと関心を持ってもいいのかもしれません。
グラフ:日本の半導体産業の現状 (出典)経済産業省(2021.3.24)「第1回半導体・デジタル産業戦略検討会議」※本記事は2024年12月05日現在の情報です。
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