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2023.09.19

2024.12.05

「量子コンピューター」が切り開く未来とは

※この記事内容は

文字で構成されています。
「量子コンピューター」が切り開く未来とは

次世代の計算機「量子コンピューター」

量子コンピューターは、次世代のコンピューターと目されています。

近年、急速にデジタル化が進み、取り扱うデータ量が飛躍的に増加しました。また、現代は様々な問題が絡んで社会が複雑化した、予測困難な時代といえます。

量子コンピューターは、スーパーコンピューター(スパコン)が何万年かけても解けない問題が簡単に解ける可能性を秘めています。

現在、世界中で開発競争が激化し、IBM、Google、Microsoft、アリババ、インテルなどをはじめとする各メーカーがしのぎを削っています。

日本では2023年3月、理化学研究所などが開発する国産初の量子コンピューターが稼働し、大きなニュースになりました。同年7月には東京大学の研究チームが、理化学研究所とは違う方式の量子コンピューターの試作機を作ったと発表しました。

他にも、産業技術総合研究所が量子計算とAI(人工知能)を組み合わせて相乗効果を狙った最新型スーパーコンピューターの24年度中の導入を目指すなど、量子技術の実用化や産業化に向けた動きが広がっています。

実用化されると我々の生活はどう変わる?

量子コンピューターが実用化されると、その高度な計算能力を活かした活躍が期待されています。

様々な分野での効率化や新しい可能性を切り拓くことで、私たちの生活の質を向上させる大きな変化をもたらすと期待されています。

医薬品と健康

数の物質を組み合わせて新しい材料を開発する材料化学計算の分野です。新しい医薬品の発見や創出が加速される可能性があります。これにより、治療が難しかった病気の新しい治療法や効果的な薬が開発され、健康寿命が延びるかもしれません。

通信セキュリティ

解読されにくい暗号技術によって、より安全な通信が可能になるでしょう。逆にいえば、その技術をもってすれば、現在の暗号は無意味になり、セキュリティの強化が求められることになります。

交通と物流

渋滞緩和や荷物の配送時間短縮のための最短経路の検索などの分野です。複雑で大量にあるパターンのなから最適な答えを導くことができます。
都市の渋滞が緩和され、配送時間も短縮される可能性があります。

金融

リスク管理や投資戦略の最適化など、金融分野で期待されています。より効果的な金融商品やサービスが提供されるかもしれません。

人工知能との組み合わせ

人工知能のアルゴリズムの一部として利用されることで、より高度な計算や解析が可能になると期待されています。

これまでと全く異なる計算方法

量子コンピューターは従来のコンピューターと計算の仕組みが異なります。

一般的なパソコンやスパコンを含む従来のコンピューターは、半導体チップが計算を行っています。

コンピューターの性能をあげるために、半導体自体の性能を向上させ、かつその部品をどんどん小さくしていってコンピューターに詰め込む数を増やしてきました。基本的に、計算する部品が増えるほど計算スピードはあがるからです。

 

しかし部品のサイズは小さくするにも限界があります。これが原子レベルに近づいていくと、物理法則が変わってしまい、計算ができなくなってしまいます。

 

我々の世界は、すべて原子から成り立っていますが、原子やそれを形作っている電子、陽子、中性子などを総称した「量子」の世界では、我々の日常の物理空間とは別の物理法則が働いているからです。

 

量子は粒と波の両方の性質を持っています。量子コンピューターは、この「粒としても波としてもふるまえる」という量子の不思議な性質である「重ね合わせ」と「量子もつれ」という性質を使っています。

 

計算の仕組みを理解するには、量子力学の知識が必要になってしまいますが、量子コンピューターは、この二つの性質を利用することで効率的に計算ができているのです。

実用化へのハードルは高く...

量子コンピューターの実用化までにはクリアすべきハードルが多くあります。

その一つが「電子ビット」の取扱いの難しさです。

量子ビットは、、量子コンピューターの計算を担う心臓部の基本部品で、大変デリケートなものです。また、取扱いの難しさに加え、熱や外部の影響を受けると設定どおり動作ができずにエラーを起こしてしまうことがあります。正しい計算結果を出すためには、随時エラーを検出して、そのエラーを訂正する仕組みが欠かせません。

規模の問題もあります。例えば、理化学研究所にある量子コンピューターは64量子ビットですが、実用化には100万個ほどの量子ビットが必要ともいわれています。

また、量子コンピューターを使えばどんな問題でもスパコンより速く解けるというわけではありません。特定の分野の問題に対してはスパコンよりも高速に答えを見つけられるということで、問題によってはスパコンのほうが速く計算できます。例えば、大きな数の因数分解や特定の最適化問題においては破格の速さを発揮する可能性があるとされています。

いずれスパコンが量子コンピューターに置き換えられてしまうのではなく、量子コンピューターとスパコンが共存していくのではないかと考えられています。

量子コンピューターは15~30年以内に最大100兆円超の利益を生むとの予測もありますが、完全に実用化された量子コンピューターの登場時期については未だ不確定です。ただ、特定の業界やタスクに特化した量子コンピューターの部分的な実用化は、より早い段階で実現されるかもしれません。

※本記事は2024年12月05日現在の情報です。

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